Agentic AppSecとは?
2026年9月30日
0 分で読めますAgentic AppSec(エージェント型アプリケーションセキュリティ)とは、AIセキュリティエージェントのチームを活用して、アプリケーションの理解、脅威のモデル化、重要な脆弱性の発見、修正すべき内容の判断、修正の生成と検証、そして修正が有効であることの証明まで、組織のアプリケーションセキュリティプログラム全体を運用する取り組みです。新しいコードと既存のバックログの両方に対して、継続的に適用されます。
この用語はagentic AI securityと混同されがちですが、両者の方向性は正反対です。agentic AI securityはAIエージェントを攻撃から守る一方、Agentic AppSecはAIエージェントをセキュリティ業務に活用します。エージェントにプログラムを運用させる動きが広がっているのは、ソフトウェアの開発速度が、人間が運用するセキュリティプログラムの処理能力を上回るようになったためです。
アプリケーションセキュリティに新しい運用モデルが必要なのはなぜでしょうか?
コードの作成速度が変化しており、以前の速度を前提としたプログラムでは、新たな量に対応できないため、アプリケーションセキュリティには新しい運用モデルが必要です。
従来のプログラムでは、問題を発見して人に引き継ぎます。その後のトリアージ、優先順位付け、修正、リグレッションリスクへの対応、開発チームとのやり取りは、すべて引き継いだ人が担います。大半のコードを人間が書いていた時代には、この方法で機能していました。しかし今では、AIコーディングエージェントが、レビューの処理能力を超える量のコードを生成しています。しかも、エージェントが持ち込む欠陥は、パターンベースのスキャンでは検出できないビジネスロジックや認可の領域に集中しています。
既存のバックログも、負担に拍車をかけています。どの組織にも、何年も未対応の検出結果が蓄積しており、攻撃者はそのバックログを自動で洗い出し、深刻度の低い問題を連鎖させて重大なエクスプロイトを生み出しています。2026年6月時点で、Snykの観測では、修正済みの脆弱性1件に対し、新たな脆弱性が約6件発生しています。
流入が処理量を上回ると、順位付けを改善しても、同じ長さのキューが並べ替えられるだけです。ボトルネックは問題の発見から解消へと移りました。この量を解消するには、現在のやり方を速めるのではなく、異なる運用モデルが必要です。
AppSecの一連のプロセスには何が含まれますか?
Agentic AppSecは、アプリケーションセキュリティの一連のプロセスをエージェントチームに任せることで、この制約に対処します。各エージェントは担当業務と明確な起動条件を持ち、新しいコードからすでにリリースされたすべてのコードまで、プロセス全体を継続的に実行します。このプロセスは6つのステップで構成され、それぞれが前のステップの出力に基づいて進みます。
アプリケーションを理解する。アーキテクチャ、データフロー、データ分類、信頼境界、そして本番環境で実際に稼働しているものをモデル化します。
脅威をモデル化する。そのモデルを使って、アプリケーションが攻撃される可能性のある箇所や、実際の被害につながる弱点を特定します。コードの変更に合わせて、脅威モデルも最新の状態に保ちます。
重要な脆弱性を見つける。決定論的スキャンと、シグネチャでは捉えられないクラスにも対応するAI推論を組み合わせ、ビジネスロジックや認可の欠陥などを検出します。
修正すべき内容を判断する。到達可能性、悪用可能性、修正結果の履歴をもとに、優先して対処する検出結果を決め、正しい修正内容を確認します。
修正を生成して検証する。問題を解決し、レビューを通過して、マージされる変更を作成します。
修正が有効であることを証明する。結果を生成したシステム以外の手段で各結果を確認し、判断とその根拠を記録します。
これはパイプラインではなく、ループです。単一のチェックポイントで実行するのではなく継続的に動き、後続の各ステップは最初のステップで構築されたモデルを参照します。プログラムに責任を負う人々は、キューの処理から、キューを処理するシステムの監督へと役割を変えます。
エージェントがセキュリティプログラムを運用するには、何が必要ですか?
3つの条件がそろえば、エージェントはセキュリティプログラムを運用できます。そして3つ目の条件が、実際に機能するプログラムと、もっともらしく聞こえるだけのプログラムを分けます。
エージェントには根拠が必要です。アプリケーションのモデルなしで推論するエージェントは、部分的に想像で補ったコードベースについて、自信満々に検出結果を出してしまいます。ループの最初のステップで構築される共有モデル、Snykがアプリケーションコンテキストグラフと呼ぶものを、すべてのエージェントが行動前に参照します。
作業範囲を限定する必要があります。各タスクには、担当業務、明確な起動条件、入力、完了条件を定めます。脅威モデルによって調査すべき箇所が示され、最初に見るべき場所が分かるエージェントは、広範囲を検索するエージェントよりも精度が高く、運用コストも低くなります。
検証は別の仕組みが担う必要があります。脆弱性を発見したエージェントに、自らの修正を検証させることはできません。自らの出力を評価するシステムは、分析で置いたすべての前提を引き継ぎます。より強力なモデルを使っても、間違いがより説得力を持つだけです。だからこそ、エージェント型プログラムでは決定論的エンジンがより重要になります。エージェントが呼び出すツールであると同時に、エージェントの検出結果を独立して検証する役割も担うからです。Snyk VulnBench JS 1.0では、LLMのみで得られた検出結果のほぼ半数が、同一条件で5回実施したうちの1回だけで確認されました。
Agentic AppSecはagentic AI securityとどう違いますか?
Agentic AppSecはAIエージェントを使ってソフトウェアを保護し、agentic AI securityはAIエージェントそのものを保護します。前述の条件は、セキュリティ業務を行うエージェントに適用されます。エージェントを保護することは別の専門領域であり、似た表現で公開されているコンテンツの多くは、そちらを扱っています。
Agentic AI securityはAIエージェントを保護します。エージェントはメモリを持ち、ツールを呼び出し、認証情報を保持し、個々の行動を人が承認しなくても実行します。そのため、従来のアプリケーションセキュリティでは想定されていなかったリスクが生まれます。プロンプトインジェクション、ツールの不正利用、過剰なエージェント権限などが、この領域に含まれます。
Agentic AppSecは、AIエージェントをソフトウェアの保護に活用します。エージェントがセキュリティ担当者となり、アプリケーションセキュリティプログラムがその業務となります。
AIを活用した開発を大規模に導入する組織には、両方が必要です。それぞれ必要な管理策、担当者、評価基準が異なります。一方を導入すればもう一方もカバーできると考えるチームは、もう一方の課題を未対応のまま残すことになります。
人々の役割はどう変わりますか?
一連のプロセスをエージェントに任せると、周囲の人々の役割は変わります。ただし、責任の所在は変わりません。Agentic AppSecでは、次の3つの変化が起こります。
開発者は作成者から承認者へと役割を変えます。自分が書いていない変更をレビューするため、各変更に添付された根拠が、これまで以上に重要になります。
AppSecのリーダーは、ゲートキーパーからプログラムの責任者へと役割を変えつつあります。誰も処理しきれない速さで増えるキューのトリアージから、信頼できる修正を可能にする条件の設計や、プログラムが機能していることの証明へと、仕事の内容が移ります。
責任の所在は変わりません。プログラムに責任を負う人は、引き続きその責任を担います。そのため、エージェントが下した判断、実行した操作、結果の検証方法を網羅する監査証跡が必要です。人の役割は運用担当者から監査担当者へと移り、監査証跡がその役割を実現可能にします。
Agentic AppSecの実践
Agentic AppSecは、コードの開発速度が人間主体のプログラムによる処理能力を超えているという問題に対応します。アプリケーションモデルに基づき、明確な範囲の業務を担当し、独立して検証されるエージェントによって、プログラムは開発の速度に対応できます。その一方で、人はプログラムの設計と、その根拠に責任を持ちます。
SnykのAgentic AppSecへの取り組み
Snyk AI Security Platformの一部であるEvo Agentic AppSecは、あらゆるエンジニアリングチームのそばにセキュリティエージェントのチームを配置し、理解、発見、修正、検証に至るAppSecプログラム全体を実行します。エージェントが作業を実行し、Snykのインテリジェンスレイヤーが、10年にわたる修正結果のデータと、到達可能性、悪用可能性、破壊可能性の分析を活用して、適切な修正を判断します。その後、Snykの決定論的エンジンが結果を独立して検証します。Snykは、チームがすでに使っている開発者ワークフロー内で機能し、特定のモデルベンダーに依存しないため、コード生成モデルとは別の仕組みで検証できます。Evo Agentic AppSecをいち早くご覧ください。
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よくある質問
Agentic AppSecはAI SASTと同じですか?
いいえ。AI SASTは、静的解析とモデルによる推論を組み合わせ、既知の不正なパターンに加えて、意図やロジックも評価できるようにする検出手法です。Agentic AppSecは、検出を6つのステップの1つとして含むプログラムです。ほかに、アプリケーションの理解、修正対象の判断、修正、結果の検証が含まれます。AI SASTはその一要素であり、Agentic AppSecはその要素を内包する一連のプロセスです。
Agentic AppSecはスキャナーに取って代わりますか?
Agentic AppSecはスキャナーに置き換わるのではなく、スキャナーを活用します。エージェント型のプログラムにおいて、決定論的エンジンは2つの役割を担います。エージェントが呼び出すツールであると同時に、エージェントが発見・修正した内容を独立して検証する役割です。AIの推論が成果物の作成と評価の両方を担うプログラムでは、独立した検証ができません。
専任のAppSecチームがなくても、Agentic AppSecは機能しますか?
はい。エージェントがアプリケーションの理解から修正の検証まで、プロセス全体を担うため、専任のAppSec部門がない組織でも、実効性のあるプログラムを運用できます。エージェントチームがAppSec機能を担い、責任者が監督し、意思決定は監査証跡として記録されます。
Agentic AppSecは、既存の脆弱性バックログにどのように対応しますか?
Agentic AppSecは、すでにリリースされたコードにも新しいコードと同じサイクルで対応します。エージェントは新機能の実装と同時に作業するため、悪用可能な問題がバックログに積み上がるのを抑えられます。また、既存の検出結果については、到達可能性と悪用可能性に基づいて優先順位を付け、検証済みの修正をリリースすることで、バックログを着実に減らしていきます。
Agentic AppSecとAgentic Development Securityの違いは何ですか?
これらはコードの両側を担います。Agentic Development Securityは、エージェントがソフトウェアを構築する際の開発方法を統制し、エージェントのサプライチェーンとエージェントの動作を対象とします。Agentic AppSecは、完成したソフトウェアを対象にセキュリティプログラムを実施します。どちらもEvo by Snykのソリューションです。
エージェントが修正をリリースした場合、誰が責任を負いますか?
これまでと同じ人たちです。変わるのは、その責任を果たすために必要な証拠です。エージェントが何を判断し、どの情報に基づいて動き、その結果が何によって独立して検証されたのかを、監査可能な記録として残す必要があります。こうした記録がなければ、検出された問題を解消するプログラムが、その修正の安全性を証明することはできません。
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